MTX50の初ツーリングの話

 MTXでは、よくツーリングに出かけました。初のツーリングは、6月というのにまだ風の冷たい、土曜の夜のことでした。

 急にバイクで2時間ほどの阿寒湖という湖に行きたくなり、夕ごはんに炊いた米の残りを塩おにぎりにしたものだけリュックに入れて出発しました。

 冬のジャンパーはやり過ぎかと思いましたが、時速30kmでも冷たい風が体に当たり、結構冷えてきました。

 1時間くらい走ったところで休憩して、自動販売機でホットの缶コーヒーを買い、束の間の暖をとりました。

 気休めにしかなりませんでしたが、残り1時間の道を阿寒湖へ向けて走り出しました。

 1時間と少しで、阿寒湖の温泉街に着きました。

 さすがに湖は暗くて見えませんでしたので、開いている食堂を探し、暖かいラーメンでも食べようと思いました。

 夜も11時を回っていましたので、居酒屋のような店しか開いていませんでしたが、ラーメンが食べられる店を見つけました。ラーメンをすすりながら、作って来た塩おにぎりをほうばっていると、店主の方が「あんた学生さんだろ?どこまで行くのか知らないけど、夜も遅いし、寒いから今日はここで泊まって行きなさい。」と言ってくれたのです。

 泊めてもらうのは申し訳ないので、明るくなるまで端の方で暖を取らせてもらうことにしました。

 朝5時を過ぎた頃、空が明るくなって来たので、丁寧にお礼を言って、出発しました。

 朝の阿寒湖は、朝日に照らされて、本当に美し輝いていました。その美しさと、見ず知らずの私に朝まで暖を取らせてくれた店長さんの優しさは、今でも忘れることができません。時間はあったが、お金が無かった頃の初ツーリングの思い出です。